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選ばれた男

 ある夜、ヒャクジョウが不審な気配を感じて目を覚ますと、側に刃物を持った男が立っていた。
 驚いて飛び起き、口を開こうとするヒャクジョウに、「静かに」と、男は刃物を向け脅した。
「どうやって入ってきたんだ。何だ。何が目的だ、生命か、金か」
 声を押さえてヒャクジョウが問うと
「場合によっては命を取るかも知れないが、とりあえず欲しいのはアイディアだ」と、よく分からないことを男は言った。
「アイディア?私は発明家でも学者でも何かの作家でもないが」
 奇妙な要求にヒャクジョウが問うと
「別に特殊な職業でなくてもいいんだ。とりあえず黙って俺の話を聞いてもらおうか」と、男が答えた。
 男は相変わらず刃物をヒャクジョウに向けていたが、直ぐにどうこうしようという風ではなかったので、ヒャクジョウはとりあえず話を聴くことにした。
「いいだろう。では話して見給え」
 ヒャクジョウが落ち着いた様子を見せたので、男は話し始めた。

「ここ最近、世の中を騒がせている連続殺人事件のことは知っているな」
「もちろんだ、分かっているだけで十四人も殺されているそうじゃないか。あっ、ひょっとしてお前が犯人なのか」
 ヒャクジョウにそう問われると男は頷いた。
「ああ、そうだ。だがそれには訳があるのだ」
「どんな訳があろうが人を殺して良い訳はない。今直ぐやめて、出来れば自首しなさい」
 ヒャクジョウが強く男に言うと、男は皮肉な笑いを浮かべた。
「自首か、それはもう腐るほどやったよ」
「どういうことなのだ」
 意外な男の言い分にヒャクジョウはひどく興味を覚えた。
「繰り返す毎日という現象を知っているか。同じ日がなんども繰り返されるのだ」
「小説や映画の類でそんな話があるのは知っているが。それがどうかしたのか」
「それが現実に俺の身に起きたのだ。ある日突然、俺は同じ日を何回も繰り返すようになった。次の日だろうと思って目覚めてみると、前と同じ日、同じ日付なのだ。初めは信じられず、自分が狂ったと思って医者にも行ってみたし、あまりのことに絶望して自殺も何回か試みた。しかし、例え死んだとしても同じ日、同じ朝に戻って来てしまうのだ。一体何千回同じ日を過ごしたことか。色々調べてみたり、あらゆることをやってみた。しかし、全て無駄だった。最後は諦めて、この繰り返す日を受け入れようとしたんだ。しかしあるきっかけで次の日が来た。それが殺人だったのさ」
「人を殺したら繰り返す日から抜け出た、ということか」
 信じられない気持ちでヒャクジョウが聞いた。
「そうだ。ところがそれ一回で終りではなかった。俺は繰り返しが無くなって狂喜したが、前日の殺人に対して悔やむ気持ちもあり、警察に自首した。そこで、取り調べを受け、留置場に入ったはずなのだが、次の日また自分の部屋のベッドにいたんだ。自首したその日がまた繰り返されたのだ。飽きるほど自首したが繰り返される日に変わりはなかった。そこでひとつの結論に達した。人を一人殺すと俺の日が一つ進むのではとね。実際、2回目の殺人を実行したら次の日に進んだよ」
「それで、毎日人を殺しているのか」
 ヒャクジョウはその男の話に驚愕して言った。
「仕方が無いことなのだ。別のいろいろなことを試してみたのだが、何をやっても俺の明日は来ないのだ。諦めて同じ日を繰り返せばいいのかも知れないが、それもどうにも我慢できなくなる。そこで、人を殺し、次の日を迎える。実は何回かヘマをして、殺人の現場を目撃されたり、捕まってしまったこともあったのだが、そういう時は次の日にならない。またその日が繰り返されるのだ。完全犯罪でなければ駄目らしい」
「それで犯人について手がかりさえつかめていないのか」
「そういう事だ。これが続く限り、俺は何かで死ねるまで何千人も殺すことに、殺せることになる。俺は本当はそんなことをしたくない」
 男は苦悶の表情をした。
「お前の境遇は分かった。私がどんなアイディアを出せばいいのかもね」
 ヒャクジョウがそう言うと男は意外そうに彼の顔を見つめた。彼の物分りのよさに驚いたのだ。
「殺人以外でお前の日が進む方法を提案すれば良いのだろう。不思議な話だがとにかくお前はそういう境遇に陥った。お前自身がそういう境遇になることを望んでいなかったのだから、これは誰か別の者がお前に完璧な連続殺人をさせるように仕向けた、と考えていいだろう」
「誰かとは誰だ?」と、男は聞いた。
「さあ、神か悪魔か。とにかくお前はその誰かに選ばれたのだ。何故お前なのか、理由は分からない。唯、その誰かの目的は分かる」
「目的?」
「人を殺させ続けるようにしているのだから、多分、その誰かは人間の数を減らしたいのではないだろうか。ただ何らかの制約があるのか、そいつが直接やるわけにはいかないのだろう。それでお前にやらそうとしている、と考えられる」
「なるほど。理屈はあっている」
 男はヒャクジョウの頭のよさに感心した。
「そこでだ。殺人以外で人間の数が減っていく方法を試してみたら・・・」
 ヒャクジョウがそこまで言ったとき、男はものすごい力で彼を殴り気絶させた。

 後日、ヒャクジョウは病院のベッドで連続殺人は14人で止まったことを知った。しかし、そのかわりに若い男性が重傷を負わせられる事件が続き、現在も止むことがないことも聞いた。命拾いをしたヒャクジョウは自分の提案が本当によかったのか、今はなくなってしまった局部の疼きを感じながら検討していた。

終り


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No title

これは^^

Re: いちごはニガテ様

コメント有難うございます。

受けた、と思っていいんですよね。一部、あそこがヒュンとなる話でした。

No title

性犯罪者をターゲットにしてくれると一石二鳥?
あと、不細工を優先して欲しいなあ。
(女の意見)

Re: しのぶもじずり様

コメント有難うございます。

性犯罪者をターゲットにすることはありそうですね。罪悪感を減らす意味でも。

でも不細工はどうでしょう。子孫を残せそうにないので、どちらかと言うとイケメンを狙うのでは。

女の意見は却下です。
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Author:火消茶腕
ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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