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原罪 はじめてのつみ

 ある日神様がおっしゃった。
「聞け、人類よ」
 世界中の人々に、その人が一番理解できる言葉でおっしゃった。
「私はこの世界の創造主である。今まで黙って見てきたが、ここらで言っておきたいことがある」
 人々は皆驚愕し、祈りをささげ次の言葉を必死に待った。
「それでは言わせてもらうが、私は贔屓なく世界をつくった。この世界を全力で作り、そしてそれらを愛してる」
 人々は喜び、あちこちで神を称える声。
「そこに偏りはない。川原の石ころもお前たち人間も、私の目からは同じである」
「お前たちを私の姿に似せて作ってもいない。お前たちが生まれてから今までに、そしてこれからも誰か特定の一人に語りかけることはない。ましてわが子を地上に下ろしたりはしていない。そして特定の民族を庇護もしていない」
「私は世界を平等につくった。命あるものも、そしてないものも。だから生き物は生まれ変わったりしない。お前たちが考える霊的なものはない。私は特別扱いはしないのだ」
「私はお前たちには高等な頭脳を贈った。理を働かせ、私の存在を推測できるなら、私が今言った事実に容易にたどり着けるはずである」
「これで話は終わりだが、ゆめゆめ忘れないでほしいのは私はお前たちも愛している、ということだ。ではなすべきことをなせ」

 しばしの沈黙。もはや言葉は聞こえてこない。
 キリスト教徒もイスラムも、仏教徒にヒンズー教徒、ユダヤ教徒に諸々の教徒、なぜか無神論者も茫然自失。しばしの混乱に陥った。
 そして出た結論は。
 悪魔の仕業という者42%。異教徒の仕業だとしたのは26%。集団幻聴だろうと結論した者17%。声など聞こえなかった派15%。
 誰も神の声とは認めず、忘れたふりをした。
 これが人類が犯した、初めての罪。人は原罪を負ったのだ。
 しかし安心していいはずだ。神はこんなわれわれも愛しているとおっしゃてくれたのだから。
                              
終わり
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テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

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No title

これはかなりの問題作ですねえ。
宗教注意の意味がよくわかりました。
人間が神のその「言葉」を認めないことが原罪ということは、聖書でもありますが(原罪ではいないですが)、「神」というものをこれはすべて否定していますね。
特にユダヤ教から始まるキリスト教にとって、「神」が自分の「子供」を人間としてこのよに送り出していないというのは大問題です。

火消茶碗さんはかなり「神」に対してアレルギーを持っているきがしました。
あと、個人的に揺さぶられました(笑)。

Re: No title

お読みいただきありがとうございます。

この話は信仰をお持ちの方は読まないに越したことはないかと。

これはマイカー、マイホームと同じ意味でマイ宗教の神話なのです。

我が宗教の教義では神様はこの宇宙を造りましたが、この世のすべてを愛してくださっています。
故にえこひいきはなく、皆平等です。ですから、人間だけに語りかけることなどありません。特別扱いは無しです。

それでも語りかけるとしたら、全員に語りかけるだろうということです。そうした場合、必ず、それを信じない人が出るでしょう。その時、罪が発生してしまいます。ですので神様は語りかけることはしないのです。

我が教義では神様は沈黙を守ります。我々は好きにしていいのです。ただし、自己責任です。神の名において行動することはナシです。善悪を語ることもナシです。
何をしようと神を否定しようと神様は我々を愛し、見守ってくれているのです。

以上が大体の教義です。

異教徒の戯言に耳を貸す事のないように、くれぐれも注意の程を(笑)

No title

この考え方は 新しい?

これも楽しく読めました

Re: いちごはニガテ様

実は全然宗教には詳しくないのですが、勢いで書きました。

新しいのか不明です。多分誰か似たことを書いてるはずです。

わたしの書いているものは多分全部二番煎じと思って差し支えないでしょう。

ただ、本人がどこから取ったか思い出せないので、勘弁してもらおうと思ってます。

No title

生物学的に考えれば、確かに神はそこまで気にしていないと思いますけどね。宗教観の話はともかくとして。もっと言えば、殺しあうのも神がそう作ったからというのもあるかもしれないですけどね。そうでなければ、人間を光合成でもする生命体にでもすると思いますし。平和に過ごしている姿を見て微笑んで、殺し合いには歓喜をして見ているのかもしれませんね。

Re: LandM様

コメント有難うございます。

この話を作ったのは随分前のことで、確か911の映像を見て思いついたと記憶しています。

神の名を利用して、若者たちをビルに突っ込ませる。大勢を巻き添えにして。

それでなくても宗教団体はやたら軋轢を起こしてきた歴史がある。

こんな姿をホントの神様が見たら、皆に一言、言いたくなるのでは、と思って書きました。
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ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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