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偶然




「ごめん、やっぱりやめよう」
 男が女を突き放した。
 
 相手の意外な態度に女は驚いたが、すぐに気を取り直し、すがった。
「どうして?なぜ?私の事好きだって、そう言ってくれたじゃない。あれは嘘だったの?」

 女の泣きそうな表情を見て、男は顔を背けた。
「いや、嘘じゃない。嘘じゃないんだけど……、駄目なんだ。君と付き合うわけにはいかないんだ。ごめん」

 深々と頭を下げる男に、女が言った。
「それは、あなたの過去のことが原因?今まで付き合った人がみんな死んでしまったって聞いたけど、そのせいなの?」

 女の言葉に男は驚いて顔を上げた。
「一体、誰にそれを?」
「セキ君から聞いたの。あなたの親友の」

 男はそれを聞き黙ってしまった。
「じゃあ、本当のことなんだ。あなたと付き合った女の人、8人全員が死んでしまったって」
 
 女がつぶやくように言うと、男は言った。
「いや、正確には違うんだ。彼女たちは僕と付き合ってた間に死んだんじゃなくて、僕と別れた後に死んだんだ。8人全員。みんな、別れて一年間の間に、事故や病気で……」

「自殺した娘は一人もいない。大体、いつも僕が愛想つかされる格好で別れているから、そんなに引きずったわけでもないし、僕だって、別れた直後は悲しかったけど、恨んだことなんて一度もないんだけど……」

 それを聞き、女がニッコリ笑った。
「なあんだ、それなら別れなければいいんでしょ?私があなたのこと嫌いになるなんて考えられない。ワタセ君もそうなんだよね?だったら大丈夫。何も心配いらないわよ」

 ニコニコと相手の手を取る女の目を見ずに男が言った。
「前に付き合った娘もそう言って、付き合ったんだけど、結局……」

「大丈夫だって。私はその娘とは違うわ。だから、付き合いましょうよ、ねっ?」
 女は男の手をギュッと握った。

 よし、もう少しで落ちそう。過去のことなんてただの偶然。気にすることなんてないのに。

 私だって、付き合った男、3人ほど、みんな付き合っている最中に死んじゃたけど、そういう変な偶然はよくあることなんだと思う。考えすぎだよ。

「お願い。ねっ?」
 女の潤んだ瞳を見て、男は根負けしたようにうなずいた。

終わり
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テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

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非公開コメント

No title

未来が見えます。男は90まで生きてから大往生しています。その半年後に女が死にます。

ふたりは出会うべくして出会ったのです。すべては神のみ心のままに。アーメン。

Re: ポール・ブリッツ 様

いつもコメントありがとうございます。

意外で、しかもほのぼのとしたオチを考えてくださってありがとうございます。

だとすると、二人が出会うのは運命の必然だったのであり、途中の犠牲者はまあ……、

神の気まぐれということで。
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ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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