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地球外知的生命体は存在するか?

 大画面に映し出された星の想像図を指し、トーチ教授が説明していた。描かれているのは最近発見された系外惑星である。
「これがアズーミ110だ。何がききたい?」
 そう聞かれたのは教授の友人、シナセン。教授に今話題の研究を教えてもらおうとして、訪ねて来たのだった。
「かなりの確率でその星に生命がいるんだね」
 シナセンが聞くと教授は頷いた。
「そうだ。この惑星は地球のように岩石型で、大きさも地球とほぼ同じ。そして主恒星との距離が調度良い、いわゆるハビタブルゾーンにある。水が液体で存在している可能性が高い」
「生命には水が必要か」
「第一条件だ。水のないところで生命が発生するとは考えられない」
「逆に言えば水があるなら生命は必ず発生するのかい?」
 もっともな質問をシナセンがした。
「多くの学者は生命が必然的に発生すると考えている。ただし、それには時間を要する。地球で生命が発生するまで三億年はかかったと見られている。それが驚異的に早かったのかは、他のサンプルがないので比べようもないが、アズーミ110は出来て50億年は経っている。多分、生命が発生するには十分な時間だと思う」

「では、そこにはわれわれのような知的生物がいるんだろうか?」
 シナセンが聞いた。
「それはわからないよ。人間のような生物が進化の過程で必ず現れるのか、学者の間で議論が分かれている。けれど、その可能性がまったくないわけではないので、現在、その惑星に向かって電波を発信しているし、向こうから電波が発信されていないか調べている」
「じゃ、もしかしたら、宇宙人と交流できるかもしれないわけだ」
「理論的にはそうなんだが、あまり期待しないほうがいい。アズーミ110と地球は約300光年離れているからね」
 それを聞き、シナセンはがっかりして言った。
「こちらからこんにちは~と呼びかけて、あっちに届くまで300年かかるというわけか。交流というには程遠いな。
 でも待てよ。既にあっちから300年前に呼びかけていたなら、明日にでも地球に挨拶が届くんじゃないか。実はもう既に来てるとか」
 やや興奮気味のシナセンに教授が言った。
「ああ、そうだといいが。君はSETIというのを知ってるかい?」
「SETI?なんだい、それは?」
「要は宇宙人のメッセージを拾おうという計画さ。電波望遠鏡を宇宙に向けて、自然現象以外の、何かしら文明が介在しているような電波を受信しようとしている。それを既に60年間やっているけど、未だに宇宙人からのメッセージは拾えていない」
「つまり、電波を発信できるような知的生物はわれわれの近所にはいないってことか」シナセンが言った。
「いや、そうすぐに結論付けられることではない。単にまだ我々が受信できていないというだけかも」
「60年もやってるのに?」
「それだけ宇宙は広いということだよ」
 教授は説明した。

「そうかー?いないと考えるのが自然じゃないのか?」
「では我々が特別な存在ということになってしまう。宇宙には無数の銀河があり、銀河には無数の星があり、星は多くの惑星を伴っている。このアズーミ110のように、地球の似たような惑星は無数にあると考えられる。そして、そこで必然的に生命が生まれるのなら、生命は進化していくだろう。それでも地球以外では知的生命体にはならないと思うかい?」
「言いたいことはわかるが、それでもこの近所には知的生命体はいないと思うよ。少なくとも我々より進化した生物はいないだろう」
「それは昔の人が地球は特別の星で、太陽や他の星が地球の周りを回っている、と考えたのと変わりない発想だぞ。地球を特別視している」
「いいや、違うと思うね」
 シナセンは反論した。「観測結果がそれを裏付けているだろう。考えてみろよ。もし、我々より知的な生物がいたとしたら、絶対に地球と何らかのコンタクトをとっているはずだ」
「なぜそう言い切れる?」
 教授が聞いた。
「それは君たちの存在さ。君たち、学者という人達が、知的生物には必ず存在するだろう。でなければ、進歩も何もあったもんじゃない」
「確かにそうだろう」
「だったら、どの星のやつだろうと懸命になって、自分たちと同じような環境の星を探すさ。知的好奇心てやつだ。学者の習性だ」
「ああ、さがすだろうな」
「あらゆる方法を使うだろう?」
「そうだろうな、その時の科学水準の粋を集めてやるだろう」
「当然、SETIとか言うのと似たようなのも以前にやってただろうし、相手もそれと似たようなことをしてると思うだろう」
「だろうな」
「だったら、必ず強力な電波で呼びかけるだろう。その呼びかけが地球に届いていないんだから、少なくとも、我々より高度な文明を持った奴は近所にいない」
 トーチ教授は黙り込んだ。彼も薄々そう思っていたからだ。我々は孤独な存在なのかもしれない。

「何だ、喜べよ。私は今の話を聞いて、長年の重荷からやっと解放されたよ」
「解放?」
 トーチ教授は怪訝な顔をした。
「有権者の手前、一応敬虔な信者のふりをしているが、私は神など信じていない。しかし、神のような存在はいるかもしれない、と思っていた」
「それは高度な文明を持った宇宙人ということか?」
「そうだ。我々の科学力では到底理解し得ないような技術を駆使し、まるで神の御業のようなことを簡単にこなすような連中をだ。
 そいつらがいつか地球に現れ、我々を断罪するのでは、と恐れていたのさ」
「断罪?」
「高度な文明を持つものがどのような道徳観念を持っているか知れないが、我々がこの地球に対してしてきた行いは、けして褒められはせんだろう。何種類の生物を絶滅に追い込んだと思う?それに同族殺しだ。そんな今までの行状をいちいち挙げられて、説教され、そして矯正されるかもしれない、と思っていたのさ」
 教授は一瞬考えこんで言った。
「なるほど、ありえないことではないかもな」
「一人で自由を満喫していたら、突然こうるさい親がやってきたような、そんな状況はうんざりだろう」
「確かに、そう感じる人間はいるだろうな」
「その心配がなくなったんだ。われわれの自由を脅かしそうな存在は当分現れない。我々はこの近辺の宇宙を好き勝手にできるんだ。
 今回の大統領選、立候補することにしたよ。地球人が内輪で揉めてる場合じゃない。一丸となって、宇宙開拓を目指すべきだ。今のところ我々はリードしている存在なのだから。大いに科学技術を発展させ、他の宇宙人がやってきてもけして屈しない力をつけるんだ。未来は希望に溢れてるぞ」

 シナセンの野望は彼の狂信的行動と多大な運があいまって、実現しようとしていた。地球上で深刻な国家間のトラブルはなくなった。宇宙開発に地球上のみんなが一丸となってもてる力を発揮できるよう、それらしい組織も設立された。
 そうした時、SETIで宇宙から不自然な電波が受信された。その内容は解読の必要もなく、地球の代表的な言語で語られていた。

「やっと一つになってくれましたね。大変結構なことです。今からおじゃましても宜しいですか?少しお話したいことがあります」
 

終わり



 
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ジャンル : 小説・文学

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ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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