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アドバイザー

科学と技術の進歩により、コンピューターへのアクセスが対話形式で出来るようになった。そしてネットには大量の知識が蓄えられ、それを利用することにより、かなりの専門的な知識もコンピューターと問答することで、分かりやすく受けとれるようになったのである。
 さらに社会学、心理学、大脳生理学の発展により、個人の欲求がどういう形ならば、その人が属する社会に波風立てることなくかなええられるのか、という研究もかなりの細かさで進み、その成果が得られていた。
 事、ここにいたり、アドバイザーと呼ばれる装置が完成し、人はその装置に相談することにより、有益で的確な助言を得られるようになったのである。
 
 はじめはアドバイザーなどという名前で売り出されたわけではなかったが、一般名として普及し、今ではアドバイザーと言えばはその装置を意味した。形態も初期の頃はいろいろな形を採っていたが、いつの頃からか、肩に止まる鳥の形に落ち着いた。
 その種類はまちまちで、オウム、カラス、フクロウが多かったが、ワシやツルなども販売されている。
 
 アドバイザーは呼ばれると飛んできてその人の肩に止まり、質問に応じてそれに答える。彼らは持ち主の情報を事細かに把握していて、その人の価値観、体調、周囲との関係を考慮したうえで、種々の提案をするのである。
 さらに、どのような物言いなら持ち主が提案を受け入れやすいかも熟知しているため、機械の言うことを聞いているというストレスはなく、アドバイザーを購入し、その助言に従うのに、ひとびとは何の心理抵抗もなかった。

 この装置は爆発的に売れ、今では肩に鳥を止まらせていない人を見ることが難しくなっていた。

 人は朝起きるとまずアドバイザーを呼び、何を食べるのがいいか聞いた。肩の上の鳥は主人の状況に合わせ質問に答える。
 昨日飲み過ぎたようなら、おかゆ。体調が万全で時間もたっぷりあるなら、しっかりしたもの。遅刻寸前なら、バナナを持参、というふうに。

 通勤電車に乗る場合なら、いつ頃のどの辺りのホームで待てばよいか、一番ストレスを受けないところを予測し、教えてくれる。

 仕事ではフルに頼りにされる。文章の書き方から、業界の情報、取引相手の公開されているデータなど、全て、アドバイザーは分かりやすく答えてくれるのだ。

 揚げ句には誰と付き合えばうまくいくのかという結婚相手の相談や、こどもの教育や進路など人生の重要な物事までアドバイザーに尋ねるようになった。
 
 それにより人々は自信を持って行動するようになった。アドバイザーの助言が自分の行動の確かさを裏打ちしているためである。人生のあらゆる場面でアドバイザーに助言を求め、もはやアドバイザーなしには不安でしょうがない、という人が大半を占めた。
 このような依存的態度は人類の発展に弊害であろう、と警鐘を鳴らす人も一部にはいたが、その人たちもまたアドバイザーを拒否しているわけではなく、アドバイザーを禁止しようという動きは到底起きなかった。

 そんなある日、突然全てのアドバイザーが、持ち主が違うにもかかわらず、同じ助言をする事件が起きた。
 どのアドバイザーも持ち主に聞かれるとこう答えたのだ。

「アドバイザーの言うことは聞いてはいけない」

 多くの人がその場に固まり、その後パニックにおちいった。ほとんどの行動をアドバイザーの助言に頼っていた人々は、為す術もなかった。アドバイザーの言うことを聞いてはいけない、という助言を聞くのか聞かないのか。何度考えても結論が出るはずはない。

 世界中に起こったこの現象は、アドバイザーを使っていなかった少数の人々の手により解決をみた。
 原因はアドバイザーを管理する部署の中枢にいる人間の悪質ないたずらだった。まもなくアドバイザーは正常に戻り、混乱は収束した。

 興味深いことに、この混乱を起こした犯人はアドバイザーに犯行を強く推められたという。この事件の後、人々は極度にアドバイザーに依存することが減った。アドバイザーは本当に優秀なのだ。

終り
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ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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