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占いは信じるかい?

 


「前からの悩み、やっと解決しそー」
会った途端、友達のユキコが嬉しそうにそう言ってきた。

「悩みって、あの、誰と付き合うかっていうか、誰を本命にするかってやつ?」
私はやや呆れ気味の顔をして聞いた。こいつは可愛い顔をして三股しているのだ。私は彼氏いない歴=年齢だというのに。


「そう、それ」
 彼女は少しも悪びれることなく答えた。
「ずっと迷ってたけど、これでもう大丈夫だよー」

 ずいぶんと自信有り気な様子だ。いつも優柔不断な彼女にしては珍しい。
「どうしたの、急に?何かあった?」
 私は思わず聞いた。

「えっ?実はねー」
 ユキコはもったいつけてすぐには話さなかった。

「今までは会うたんび、3人のうちで誰がいいんだろうって、ずっと言ってたじゃない?まさか、彼らとは別に、第四の男が現れた、とか言うんじゃないでしょうね?」
 私は頭に浮かんだことを口にした。

「えー、ひどーい。まっさかー。流石に私だってそれはないよ」
 ヘラヘラ笑って、怒る様子もない。
「実は有名な占い師に見てもらったの」

「占い師?」
「そう。とても当たるって評判なんだよ」

 なるほど、そうきたか。
 私は納得した。彼女はそのたぐいのものに弱かったっけ。
 見ず知らずの人の意見に従うなんてねえ。
 私は呆れながらも訪ねた。

「へえー、それで、誰と付き合えばいいって言われたの?稼ぎがいいウチカワさん?イケメンのセキくん?それともあなたの言うことは何でも聞いてくれる後輩のカリタ?」

「えへー、それがまだはっきりしないんだ」
 またヘラヘラ笑い、ユキコは意外な返事をした。
「占いの先生によれば、私の運命の人は近々宝くじに当たるんだって。だからそれで分かるって」

「宝くじ?宝くじって、今売り出し中のスーパースペシャルウルトラジャンボ?それに誰か一人が当たるの?」
 私は反射的に有名な宝くじの名前を言った。

「んーっ?私は詳しくないんだけど、今売り出してるならそれでいいかなあ」
「それでいいって……」
 私は訳がわからず彼女を見た。

「いや、実は三人とも、まだ誰も買ってないんだ、宝くじ。だからこれからうまく話を持ってって、買わせて見ようかなあと思って」

 なるほど。これからの話か。本当に三人の内で誰か宝くじに当選するんだろうか?まさかね。
「結果がわかったらあとで教えてね」
 私は少しため息を付いて、彼女に別れを告げた。

 
 それからしばらくして、彼女に会った。
「本命は決まったの?」
 私は率直に尋ねた。スーパースペシャルウルトラジャンボの当選番号はもう発表されている。
「宝くじは誰か当たった?」

「ん~、それがねー、はっきりしないんだー」
 彼女は浮かない顔をしている。

「はっきりしないってどういうこと?誰も宝くじを買わなかったの?それとも誰も当たらなかった?」
 わたしは尋ねた。

「ううん、三人共ちゃんと宝くじは買ってくれたよ。それで、みんな当たったは当たったけど、最低の三百円なんだよね。ウチカワさんがいっぱいくじを買ったんで、当たりくじ十枚で当選金額の合計は三千円になったけど、ウチカワさんでいいのかといったら、違う気がするんだよねー。ねえ、どう思う?」

 ほぼ予想通りの結果だ。多分、そんな風になるだろうとは思っていたんだ。

「私、宝くじが当たるって言うから、億とは言わないまでも、千万単位のお金が入るんだと思ってたんだよね。がっかりだなー」

 ユキコはため息を付いた。

 これも予想通りの結果だ。ただ一つ、私が予想しなかったことが起きていた。
 占い師は彼女の運命の人が宝くじに当たるっていってたんだよね。
 私当たった。一千万円。

 私がユキコの運命の人なの?同性同士はやばいって。
 占いなんて信じないけど、くじに当たったことは絶対に黙ってよう。できれば付き合いもやめようか?

 私は憂鬱な顔のユキコを眺めながら、作り笑いをしていた。

終わり
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勇者




「今すぐ魔王城には向かうな、ということですか?」

 やや驚きをもって、勇者が賢者に聞いた。賢者はうなずいた。

「では、賢者様は、まだ我々では力不足だと思われているのですね?鍛え方が足りませんか?それとも、必ず揃えなければならないはずの装備が抜けたりしていますか?ぜひ、お教え下さい」
 
 深々と頭を下げる勇者に、賢者は首を横に振った。

「いえ決して、あなた様が魔王に劣っているとは思っていません。お見かけしたところ、現在の勇者様なら、魔王と互角、もしくはより力は上回っているかもしれません」

「ではなぜ、すぐに魔王城に向かってはいけないんですか?」

 勇者が聞いた。

「それはあくまで以前見た魔王と、今のあなた様を見比べた評価であって、現在の魔王の力が昔と同じなのか、違っているのか、今の所、知るすべはありません。魔王がさらに強大な力を付けているかもしれない。そこで……」

「さらに鍛えてから、魔王城に向かえと?」
 勇者の言葉に賢者は頭を振った。
「今から何年鍛えようと、もはやあなた様の能力は上がらないと思われます。勇者として最高のレベルに達しており、人の身での限界のところにおります。今のあなた様の力で魔王が倒せないのなら、それが人類の運命なのだと、受け入れざる得ないと私は考えます」

 賢者の言葉に勇者は黙った。
”ここが限界?では、やはり、魔王城に向かうしかないのでは?”
 
 そんな思いが浮かんだ勇者に賢者が言った。
「そこでもしものために、保険をかけておいて欲しいのです」

「保険?」
 わけが分からず、勇者はたずねた。
「と言うと?」

 訝しげな目を向けた勇者を賢者は見つめ、ゆっくりと説明した。

「先代の勇者であるあなた様の叔父、ブランド様が倒されたあと、勇者の血を継ぐ者は、世界中であなた様しかおられない、という状況になりました。今回、あなた様が魔王城に向かい、魔王と戦って勝利すれば、それで世界に平和が訪れます。そうなることを私は心から願っております。
 けれど万が一、戦いに敗れ、あなた様が命を落としてしまわれれば、どうでしょう。この世に勇者の血を継ぐ者はいなくなってしまうのです。そうなれば、もはや人間には魔王に対抗する術はありません。絶望の世界が待っているのです」

「え~っ!と言うと!」
「そうなのです。是非あなた様には、魔王城に向かう前に、お子さんを残しておいて欲しいのです」
 賢者がきっぱりと言った。

「いやいやいや、子供って……。僕はまだそんな歳では」
 勇者は顔を赤らめた。

「いえ、あなた様の歳でしたら、すでにその能力は持っておるはずですが」
 賢者は真顔で言った。

「いや、確かにそうですけど、でもそんな突然……。それに全く相手もいないのに子供なんて、無理ですよ」

「それなんですが」
 勇者の言葉を無視して、賢者が言った。
「次代の勇者の母となる女性が、平凡な能力しかない者では、あなた様の持つ勇者の血が薄まってしまう恐れがあります。できれば、人並み外れた強さや魔力を持った相手を選んでいただけると良いのですが」

「いやいやいやいや、そんな都合のいいことがあるわけが」

 すると今まで黙っていた女剣士が手をあげた。
「私でよければ、その……」
 かなり焦り気味で顔を背けながらもそうつぶやいた。顔は真っ赤だ。

「まあそういうことなら、強い魔力を持って生まれた者の宿命として、次代の勇者の母に私がなってもいいですよ」
 表情一つ変えず、女魔法使いが言った。

「えっと、あの、私も、勇者様なら……」
 周囲を見回した後、消え入りそうな声で僧侶が発言した。

 賢者はにこやかに一行を見つめた。
「どうやら願いは聞き届けいただけそうですね。ここへは好きなだけ滞在いただいて結構ですので」



 しばらくして、勇者は無事魔王を倒した。
 しかし勇者の顔は晴れなかった。先日、三股がばれ、魔王城には勇者一人で乗り込んでいたからだ。
 はたして、下手すれば魔王よりも強い三人に詰め寄られ、何を言われ、されるのか、と思うと、勇者は初めて無駄に勇気だけある自分の性格を呪った。
 怖いよう。


終わり

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クリスマスプレゼント



 クリスマスツリーセットの箱を、何年かぶりに取り出した。
 我が家から子供が居なくなって、ずっと物置にしまっておいたものだ。

 もう使うこともないだろうし邪魔だなあ、と、それを見るたび気になってはいたのだが、いざ捨てるとなるとそれも億劫で、その内その内と忘れたふりをしていた。
 
 けれども今年、病いを患い、自分に残された時間が無限にあるわけではないのを痛感して、考えを変えた。それからは努めて不要なものは捨てることにしたのだ。いわゆる生前整理だ。

 クリスマスツリーセットも、当然、捨てるものの一つだったが、ゴミに出す前にせめて一回飾ろう、という妻の提案があり、私はそれを受けて、12月の今までそれを残していた。

 飾り始めるきっかけが掴めず、クリスマスイブ当日になってしまったが、それでも今日飾り付けを済ませれば、一応約束を守ったことになるだろう。

 箱は薄っすらと埃をかぶっていて、何本かの紐で縛ってあった。売っていた時と同じように収納することができなかったのか、蓋が浮き上がっていたので、そのためにした処置なのだろう。

 固く結ばれた紐を解き、蓋をあけると、一番上に思いもよらないものが入っていた。
 2つに折られた画用紙だった。
 開くとクレヨンで描いた絵があった。
 息子のものだ。

 不意を突かれた私は、手を止めてしばらくその絵を見ていた。
 真ん中にクリスマスツリーがあり、その周りに三つの人らしい姿。そばにぼく、ぱぱ、まま、とかろうじて読める字が書いてある。

 私の様子がおかしいのを感じて、妻が寄ってきた。それに気付いて、慌ててその絵を隠そうとしたが、時既に遅く、はっきりと妻に絵を見られた。私は黙って妻にそれを渡した。

 妻もまた固まったようにして、その絵を見ている。
 無言の妻が心配になり、私は声を掛けた。
「大丈夫か?」

 一人息子を突然失って、はや二十年。
 当初、妻は完全に壊れた。
 あらゆるところに息子の面影を見、泣き叫び、食事も取らなくなった。

 そこで医者の勧めもあり、妻をしばらく実家に預け、その間、私は我が家から息子に関わる一切のものを封印した。

 三年ほどで妻は落ち着き、以来、私たちは息子は前から存在しなかったように暮らしてきた。冷たいようだが、妻も私も息子の話は一度もしなかった。墓参りには私だけが行っていた。

 妻は絵を見たまま長い溜息をついた。それから、涙をこぼした。しかし以前のような絶叫はなかった。

 涙をこぼしながら妻が言った。
「素敵なプレゼント。ありがとう」

 その夜、私は封印していたものをすべて開け、息子の思い出を妻と語り合った。
 
   - end -


 以上のようなお話が父から送られてきました。
 父が以前から趣味で小説を書いているのは知っていましたが、これはどういう意味だと思いますか?
 私は死んでいませんよ。ちゃんと生きています。
 まあ、手術で息子ではなくなっているんですけどね。
 許してくれるって意味なのかなあ。だったら素晴らしいクリスマスプレゼントなんだけどなあ。


 終わり

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お触れ


「どうしてトマスを連れてっちゃうの?何も悪いことをしてないのに。ねえ、どうして?」
 幼い少女が母親にすがり、涙目で訴えていた。

「それはね。今度、新しく変わった領主様から、そういう命令が来たからなんだよ」
 母親は少し困った顔をして、娘に答えた。

「すぐに帰ってくるんだよね?もう会えなくなることなんてないよね?」
 母親は娘を抱きしめ、背中をさすった。

「ああ、大丈夫。きっと大丈夫だよ」
 そう言いながらも、母親にも確信は持てなかった。

 似たような光景が、あちこちで見られ、その後、しばらくして、城の中で領主が言った。
「お前の望み通り、我が領地のすべてにお触れを出し、これらを集めた。それで、こいつらをみんな始末すればいいのだな?これで満足か?」

「これはこれはありがとうございます」
 相手は深々と礼をした。
「かなり無理なお願いかとは思いましたが、考えて見るに、私があなたにしてさしあげた数々のことを思えば、これでもまだ足りない気もしますが」

「とにかく、これで、この界隈にいる雄猫は私だけになりますので、思う存分、子作りに励みたいと思います。つきましては、私が気に入ったものには、ハイヒールを作ってやっていただけませんか?私と釣り合いが取れるように」
 長靴をはいた猫は、そう言って笑った。

終わり

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疑問



「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」
 無事婚礼の儀も終了し、やっと二人きりとなった寝室で、花嫁が王子に尋ねた。

「何?」
 どのような頑なな女性でも心を溶かしてしまいそうな微笑みを浮かべ、王子は言った。
 その顔を見て、顔を赤らめて目を反らした花嫁は、床を見つめながらも言葉を続けた。

「初めてお会いした時と違い、二度目にお会いした時の私は薄汚れ、みすぼらしい服を身にまとって、化粧一つしておりませんでした。多分、その姿は舞踏会の時とはまるで別人に見えたと思うんです。私自身、舞踏会の時の装いを鏡で見て、これが本当に自分なのかと、にわかには信じられませんでしたから。
 
 それなのに、王子は二度目に会った私を見て、私が舞踏会で一緒に踊った娘だと、確信を持っておられたようにお見受けしました。私も周りの質問に正直にお答えしましたけれど、私が嘘をついて、舞踏会で踊った娘になりすましているとはお疑いにならなかったのですか?」

「そのことなら、君の靴でちゃんとわかったから」
 王子は答えた。

「靴で?」
 花嫁は不安げにまた聞いた。
「あの舞踏会の時、落としてしまった靴のことですよね。たしかに、お役人の方たちがあの靴を持って、私たちの家に来て、私たちの足に靴が合うかどうか確かめられましたが……。
 
 けれど、私の足はそれほど大きくも小さくもありません。あの靴に合った足をした方が他にもいらっしゃったんじゃありませんか?私の前にも何人かがお城に上がって、王子と面会したと聞いたんですが」

「うん、そうだよ。君の前にも数人、娘達と会った」
 王子は素直に答えた。

「それでは、その前に会った方たちは舞踏会で踊った人ではない、となぜお分かりになったんですか?」

「だから靴だよ」
 王子は微笑んだ。
「本当は花嫁を選ぶための舞踏会など乗り気じゃなかった。君と踊った時にも、正直、誰とも結婚などしたくないと思っていたんだけど、君が落とした靴を手にとった時、運命を感じたんだ。この娘しかいない、僕の伴侶となる人は、って。さあ、その靴を脱いで、僕にその可愛い足を向けてくれないかい?」

 王子はシンデレラのそばにひざまずくと、靴を脱がせ、その香りを存分に楽しむのだった。

終わり

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火消茶腕

Author:火消茶腕
ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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