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 いらっしゃいませ。
このブログにはしろうとが趣味で書いた創作ショートショートが載せてあります。

 

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目次1~100

1、「前書き そんな時代」 創作をする方々に

2、「原罪 はじめてのつみ」 宗教注意

3、「白衣の天使」 看護師さんが好きな人どうぞ

4、「風邪薬」 夢の風邪薬です

5、「選ばれた男」 ホラー?

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目次101~

101、「神はサイコロを振る」 ある男が罪に問われ
    「神はサイコロを振る」(オチ付け足し)

102、「奇跡」 起きる時は起きるのかも

103、「奇跡は起こらなかった」 検死担当医が呼ばれて

104、「黒いサプライズ」 シモネタ注意

105、「白いサプライズ」シモネタ注意. 

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安らかなお産




「で、相手は誰?」
 病室に入ってくるなり、険しい顔で母が言った。

「は?」
 私は訳がわからず、そう返した。
「何?どういうこと?相手ってなんの相手よ」

 合点の行かぬ私に対し、母は私をにらみ、言った。
「それはもちろん、あんたが今夢中になってる相手よ。誰?友達?同僚?それとも元彼の誰か?」

 母が尋ねている相手の意味がわかり、私はカッとなって言った。
「なに言ってんのよ!私が浮気してるとでも?私が夢中になっている人と言ったら、夫のタカユキさんしかありえないじゃないの!一体、何を根拠に母さんはそんな事言うの?」

 私は母を睨み返した。

「そう。しらばっくれるの?」
 しばし両者が沈黙した後、母が口を開いた。
「アメリカハタネズミやキハタネズミのこと知ってる?」

「はあ?何突然?私はお母さんのような動物学者じゃないんだから、知ってるわけ無いでしょ」
 あまりの意外な言葉の連続に私は母が狂ってしまったのでは、と考えた。

「じゃあ、ゲラダヒヒのことは?」
 また母が言った。

 私は頭にきて、大声で叫んだ。
「そんな、猿とかネズミとかのこと知ってるわけないじゃない。一体、お母さんは何が言いたいの!?頭おかしくなった?」

 私が興奮して母を睨むと、母は答えた。

「今言った動物たちには共通の特徴があってね。妊娠しているメスは、もっといい相手が見つかると、流産するの。そのもっといい相手の子供をすぐに妊娠できるようにね」

「はあ?」
 私は呆れてものが言えなかった。
 無理やり気持ちを落ち着かせると、母に言った。
「じゃ、母さんは私が今、切迫流産でこうやって入院しているのは、私がタカユキさん以外の人を好きになったのが原因だ、と思っているわけなのね!」

 母は何も答えなかった。
「バッカみたい。ヒヒとかネズミとかと一緒にしないで。私は人間よ。一体、なんの根拠が在って、そんなばかみたいな考えを持ったのよ。曲がりなりにも学者の端くれでしょ。おかしいわよ」

 私は母を問い詰めた。すると母は私の方にゆっくりと近づいてくると、私の頬をなでた。
「分かるの、私には。なぜって、私も通った道だから」
 母は言った。
「私はあなたを生むまで、3度流産した。そしてその原因に気付くのにそこまでかかってしまった。自分の体質にすぐに気づいていれば……。
 彼と別れ、ずっと夫以外、誰とも会わないようにして、やっとあなたは生まれたの」

 母の目が潤んだ。
「辛かった。あなたには私のような目に在って欲しくない。あなたのお腹の子が無事に生まれるのを私も心から願っているの。だから正直に言って。誰?あなたが思っている人は?別れるのに全面的に協力するわ。もちろん、タカユキさんには絶対ばれないようにするから」

 母が私の手をギュッと握りしめた。
 私はそれを振りほどいた。
「いい加減にして!何、おかしなこと言ってるの」
 私は言った。
「私が切迫流産気味になったのは、少し仕事で無理したからだけ。そんな変な理由じゃないわ。私は夫以外好きな男性なんていません。私は母さんとは違うんです。悪いけどもう帰って。顔も見たくないわ」

 私の剣幕に恐れをなしたのか、母はおとなしく引き下がった。けれど、あの様子だとまた来るかもしれない。

 しかし何をバカなことを。私がこうして切迫流産ぎみになって入院しているのは、私がそう望んだからに違いないのに。

 私は夫のタカユキさん以外に好きな男性なんていない。ただし、女性は別。
 私の主治医のかおる先生。素敵な人。先生の側にいられるなら、多少、流産気味になることなんて何でもない。
 もちろん、ちゃんと後は注意して、元気な赤ん坊を産むわ。流産なんかしたら、かおる先生の業績に傷つけることになるんだもの。頑張ろう。きっと無事に丈夫な赤ちゃんを生んでみせるわ。

終わり


テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

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多様性の確保

多様性の確保

「あの~」
 保育器に入っている赤ん坊を眺めていると、不意に中年の女が声をかけてきた。
「ひょっとして、あなたは、あの赤ちゃんの、その、遺伝学上の父親ですか?」
 
 俺は驚いて相手を見た。それなりに整った顔と身なりをしていたが、どこか野暮ったい印象を受ける。
「えっと、どちら様で?」
 俺は相手の問いには答えず、こちらから尋ね返した。

「あっ、突然、すみません。不躾なことを聞いて」
 女は顔を赤らめ、ペコペコと頭を下げた。そして
「あなたがあの赤ちゃんをずっと見ていらっしゃたので、そうなのかな、と思いまして」
 と、弁解がましく言った。
 そして、あとは黙ってこちらを見た。俺の言葉を待っているらしい。

 その姿は妙に頼りなげで、俺の不信感を和らげるのに十分だった。しかし、一応、言葉を選び、
「そうだとしたら?」と、俺は曖昧に答えた。そして
「あなたもあの赤ん坊の関係者かなんかなんですか?」と、逆に質問した。

 それに対し、女はコクンと頷いて言った。
「はい。私はあの赤ちゃんの、生んではいませんけど、その、遺伝学上の母なんです」


 近年、我が国の未婚率は大幅に増加し、生涯独身を通す者が過半数に達するまでになった。それに伴い、出生率は壊滅的に低下し、このまま行けば国が滅ぶ、という懸念を大勢の人が持つようになったのだ。
 そこで、時の政府は、国民の遺伝子多様性の保持を名目に、18歳となった時点で個人の精子と卵子を一部採取、凍結保存し、そして、50歳を越えても一人も自分の子供がいない人に対し、その保存していたものを使って、同じ境遇のもの同士で人工的に赤ん坊を作ることを決定した。
 その際、どのような組み合わせで精子と卵子を交配させるかは、コンピュータを使ってランダムに行われた。
 
 なお、これは安価で安全な人工子宮の開発が.なされていたからこそ可能なことであった。
 
 その方法で生まれた赤ん坊は、基本的に国が育てることになっており、遺伝学上の父、母に何ら責任はない。しかしながら、自分の遺伝子を持った赤ん坊が生まれた場合、その旨は本人に通知が行き、そして、もし望むなら、実子として育てる権利も有していた。ただし、一人で育てるにしろ、だれかと共にしろ、もう片方の遺伝学上の親の了解を得なければならない、とされている。

 ここでこの女と出会ったのは偶然なのか?
 俺は疑いの目で相手を見た。
 俺が今日、ここに赤ん坊を見に来ることを誰かから聞いたのだろうか?

「じゃあ、あなたもあの赤ん坊を見に来たわけなんですね。ひょっとして、引き取ろうと考えてるんですか?」
 少し、失礼かとは思ったが、俺は女に聞いた。

 女は少しうつむいて、床を見ながら言った。
「実は迷っているんです」
 一旦、言葉を切り、それから俺の方を向いた。
「国が手厚く補助してくれるのはわかっているんですけど、一人で育てるのはやはり不安で」

 一人?するとこの女も俺と同じで頼れる家族はいないのか?

「子育てを手伝ってくれそうな人はいないんですか?」
 言って、余計なことを聞いてしまったか、と後悔したが、女は気を悪くした風もなく答えた。
「ええ、恥ずかしながら、今までずっと独り身でして、既に両親も他界してまして、まさか、兄弟に迷惑を掛ける訳にも行かないだろうし、どうしようかと思ってるんです」

 そう言った後、俺をじっと見つめた。
「そうなんですか」
 俺は適当に相槌を打った。

 噂では、結構な頻度で、国に赤ん坊を作られた二人は、カップルとなって子供を引き取り、育てているという。
 これは、女が俺を誘っているのか?
 そのためにここで俺を待ち伏せしていたのだろうか?

 俺は相手の女をじっくりと観察した。
 年齢は多分俺と同じ、50なんだろう。年相応の老け方をしている。
 服装や、喋り方を見る限り、特別、おかしなところはなさそうだ。
 顔は十人並み、だと思う。

 なんで、今まで独り身だったのだろうか?
 若干、気が弱そうに感じるので、俺と同じように、恋愛に臆病で、踏み込めないまま、今の年まで来てしまったのだろうか?

 もしそうなら、似た者同士ということで、カップルになったら、うまくいくのかもしれない。
 正直、このまま、一人で老いていくのはやはり寂しい。俺はどこかでこんな機会を待っていたのかもしれない。

「ここではなんですから、どこかで少しお話しませんか」
 俺は女を誘った。
 
 女はその言葉を待っていたかのようにうなずいた。

「では、そこらの喫茶店にでも移動しましょう」
 そう言って、保育器が見える場所から移動しようとしたとき、若い女が近づいてきた。病衣を着ているので、どうやら、ここに入院している人らしい。

「あの、お二人はあの子の遺伝学上のご両親ですか?」
 突然、そう話しかけてきた。
 誰だ?若くて、綺麗な娘だが。

 俺と女は顔を見合わせた。女の方も知らないようだった。
「あの~、どちら様で」
 さっきと同じように俺は言った。

「えっ、あっ、わたし、あの子の母親なんです。私があの子を生んだんです」
 若い女が答えた。

 どうやら、俺の遺伝学上の子は人工子宮から生まれでたのではなく、この娘を借り腹にして、この世に出てきたらしい。
 代理出産は、お金に困っている若い女のいい仕事になっている、という話は聞いていた。しかし、生んだ後、情が移って、結局自分で育てることを希望するものも、後をたたないとか。

 ただし、いくらお腹を痛めたとしても、養育する権利は遺伝学上の両親に優先権が与えられていて、二人の了解を得なければ、子供を引き取ることはできない。
 つまりそういうことか。

「ひょっとして、あなたもあの子を育てたい、と思ってるんですか?」
 この際なので、俺は率直に聞いた。

「実は迷っているんです」
 さっきと同じ言葉。
 なんかひどい偶然だな。

「国が手厚く補助してくれるのはわかっているんですけど……」
「一人で育てるのは不安だと」
 俺は言葉を続けてやった。

「ええ、頼れる人は誰もいなくて」
 そう言って、若い女は俺達を見た。

 なるほど、なるほど。それで、遺伝学上の父親の援助が欲しい、ということかな。
 確かに、代理出産した女とカップルになった男の話も聞いたことがあった。
 
 なんだよ、両手に花か?
 まあ、一方はもう姥桜だが、さて、どうするか?やっぱり若い方の女だろうな。あわよくば両方と子育てしていくという選択もあるか?

 俺が色々妄想していると、若い女が中年の女に近づいて言った。

「私、男性が苦手で、でも子供は欲しくて、しかもできるだけ若いうちに母親になりたくて代理母になったんです。どうか私と一緒にあの子を育ててくれませんか?」

 「ええ!?それは……」
 遺伝学上の母親の女は、ちょっと驚いたようだったが、すぐに乗り気な様子を見せた。
「確かに私もひとりで子育ては心細いと思っていたので、渡りに船かもしれませんけどいいですけど……。遺伝学上の父親の許可を得ないと、お返事するわけには……」

 二人の女が俺の方を見た。
 ここで俺がウンと言わなければ、かなり非難されそうな雰囲気……。

 両手に花とか、間抜けな希望だった。
 俺は、お好きなように、と答えるしかなかった。

 今どき、子育てするカップルには多様性が溢れている。

終わり




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ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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