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 いらっしゃいませ。
このブログにはしろうとが趣味で書いた創作ショートショートが載せてあります。

 

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目次1~100

1、「前書き そんな時代」 創作をする方々に

2、「原罪 はじめてのつみ」 宗教注意

3、「白衣の天使」 看護師さんが好きな人どうぞ

4、「風邪薬」 夢の風邪薬です

5、「選ばれた男」 ホラー?

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目次101~

101、「神はサイコロを振る」 ある男が罪に問われ
    「神はサイコロを振る」(オチ付け足し)

102、「奇跡」 起きる時は起きるのかも

103、「奇跡は起こらなかった」 検死担当医が呼ばれて

104、「黒いサプライズ」 シモネタ注意

105、「白いサプライズ」シモネタ注意. 

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イワナガヒメ



「コノハナサクヤヒメの話って、ちょっとおかしいよね?」
 
 富士の浅間大社がテレビに出てきたのを見て、相手が言った。
 コノハナサクヤヒメは日本神話に出てくる女神で、富士山本宮浅間大社の主神である。
 私は大学でそのあたりのことを勉強していたので、相手は話題にしてきたのだろう。

「えっ?どこかおかしいですか?」
 私は何の気なしに応えた。
 
「うん、とても腑に落ちないんだよね、私には。コノハナサクヤヒメの嫁入りの話は」
 私を見つめて、やや熱を帯びた調子で言う。

「嫁入りというと、婿のニニギがコノハナサクヤヒメだけを望んだのに、義父が姉のイワナガヒメも一緒に嫁に寄越してきて、そのイワナガヒメがひどく醜いので、彼女だけ送り返した、という辺りの話ですか?
 まあ、それは、人に寿命があることを説明するために、作られたからで……」

「知ってるよ」
 私が言うと、直ぐに相手が返した。
「そういうのバナナ型神話と言うらしいね。人間に神がバナナか石かを選ばせたら、食べられるバナナを選んだんで、人は死ぬようになった、石を選んでたら、死なないようになっていたのに、ってやつだよね」

「そうです。それに類似した話は世界中にあって、コノハナサクヤヒメの嫁入りもその変形なんですね。花はきれいだけど、儚い。岩は醜いけれど、永遠に存在する。ニニギはコノハナサクヤヒメだけを選び、イワナガヒメを返したので、私たち人間は死ぬようになったという訳です」
 私はそう解説した。

「確かにそういう事なんだろうけど、だったら普通にニニギの前にイワナガヒメとコノハナサクヤヒメを並べて、どっちか選べ、とやったって良かったんじゃない。
 それでなければ、姉妹が送られてきたけれど、ニニギは姉には触れなかった。彼女はそれに耐えられず、自ら実家に帰ってしまった、ということでも良かったんじゃないかと思うんだよ。
 何で、わざわざイワナガヒメが一緒に嫁入りし、その後彼女を送り返すという話になったのか?
 嫁の実家の意向、舅の気持ちを逆なでするような行為をあえてするなんて、どう考えても不思議でねえ」

 なるほど。言われてみれば。

「そこで思ったんだよ。実はイワナガヒメはさほど醜くはなかったんではないか、たしかに妹のコノハナサクヤヒメのように可憐ではなかったのかもしれないけれど、それなりの魅力的な容貌をしていたんではないか、ってね」

 はあ?

「つまり、ニニギの側にいて、親しくなれば、関係を持ってしまってもおかしくないくらいの顔立ちは、イワナガヒメも持っていたんではないかってこと」

「はあ?だとしたらどうだと言うんですか?」
 私は相手の言うことの真意がわからず、素直にたずねた。

「コノハナサクヤヒメはニニギと姉が関係を持ってしまうと、自分のほうが捨てられると考えたんではないだろうか?妹は姉に何某かの劣等感を抱いていたんだよ。
 だから妹はニニギに姉を追い出すように迫ったって考えられない?私と姉、どっちを取るのか、ってな具合に。
 そう考えると、ニニギが舅の意向を無視し、イワナガヒメを送り返すのも納得がいくと思うんだ。わざわざ舅に逆らう気はないけれど、嫁の頼みなら、それもしょうがないよね?」

 ああ、なるほど。
 私は相手がなぜこんな話を熱心にしているのか、やっとその訳が分かった。

 お義父さん。多分、トウジさんからお聞きになったんでしょうけど、たしかに私の妹は私より可愛いいです。そして、私のほうが最初に紹介されたのに、相手のその男性は妹と結婚しました。
 その時、少しショックを受けたのは確かですけど、今はあなたの素敵な息子さんであるトウジさんと結ばれ、幸せいっぱいで、あの時のことはもうすっかり過去のことになってるんですよ。

「でも、正直に理由を言えないから、イワナガヒメがとてつもなく醜いので、返しました、ということにしたんじゃないかな。大体、岩って、必ずしも醜いわけじゃないよね。美しい岩だって探せばあるだろうし……」

 未だ熱心に自説を披露している義父に、どう言葉をかけるべきか……。
 私は大変困った。


終わり


最後までお読み下さり、ありがとうございました。

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

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生前整理



「今度から生前整理を始めるよ」
 どこから聞いてきたのか、夫がそんなことを突然言い出した。

 夫も私もともに五十代。息子も娘も既に社会人となり、家を出ているので、一戸建てに二人暮らしだ。さほど広くもない我が家ではあるが、二人が使い切る程に狭くはない。
 そのため、余った部屋は徐々に乱雑とした物置と化していて、確かに、このまま放置しておくのは得策ではないかもしれない。

 しかし、私は片付けは根本的に苦手だ。基本的に物が捨てられないのだ。つい、いつかは使うかもと、種々雑多なものを取っておく癖があり、お陰で家のあらゆる場所が雑然としていた。

 それでも、「ん~、私はいいや。あなたの分だけやって」と、私は逃げた。
 だってめんどくさいじゃないですか。すぐすぐどちらかがどうこうなることはないだろうし。

「じゃあ、まず、僕の私物だけを整理するね。それが終わったら、家のもの。それから二人の共通のものとやっていこう。あとは気が向いたら、君が自分のものをやりなよ」
 夫はそう言って、どこからか大量の段ボール箱を調達してきた。

 それから夫は玄関とか洗面所とか、場所を決めては自分のものを全部出し、いらないと思うものを段ボール箱に詰め込んだ。
 しかし、それをすぐに捨てることはしないらしい。

「ここに中身と、今日の日付を書いて、物置に置いておくんだよ。そして一年間はそのままにしておく。一年の間に使う事態が発生したら、それはいらないものじゃなかったってことで、箱から取り出して使えばいい。一年間、出番がなかったのなら、それは本当にいらないものだから捨てる、という訳」

「物たちに執行猶予を与えてるわけね」
「まあ、そういうこと」
 夫は答えた。

 それから、夫の若い頃の服や靴、独身時代趣味だった登山用品、本やCDなどが次々と箱詰めされていった。
 それに伴い、徐々に我が家の風通しが良くなった感じもしたが、家にあるのは大半が私のものなので、目立った変化はない。
 
 休日を1日使って、夫は私物の整理をやり遂げたようだった。次は家のものか。
 ダンボールでいっぱいになった物置を眺め、私はある箱に目が行った。そこには”その他”と書いてある。
 他の箱にはきちんと専門書とか靴とか、中身が表記されているのに、それだけが曖昧になっていることに私は違和感を覚え、その箱を手にとって見た。異様に軽い。

 好奇心には勝てず、悪いと思いながらも、私は夫に無断でその箱を開けてみた。
 中には書類があった。

 ああ、夫は知っていたんだ。
 それは私と元カレとの浮気を報告している興信所の書類だった。

 私はなかなかものを捨てられなくて、結婚後もズルズルと元カレと付き合っていた。あちらが転勤して終わったけれど、二十年くらい前のことだけど。

 夫は一年経ったら捨てる箱にこれを入れていた。私を許してくれているのだろうか?それとも、この一年で何らかの答えを出すために、ここに入れたのか?

 果たして私はどうしたらいいのだろう。
 洗いざらい告白する?何も見なかったことにして、平静を装う?
 それとも、前よりはいくらか優しくしてみる?

 自分が整理されるまえに、自分で整理するべき時なのだろうか。

終わり

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

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ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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