FC2ブログ
コンテントヘッダー

初めてご訪問された方へ



 いらっしゃいませ。
このブログにはしろうとが趣味で書いた創作ショートショートが載せてあります。

 

続きを読む

スポンサーサイト
このページのトップへ
コンテントヘッダー

目次1~100

1、「前書き そんな時代」 創作をする方々に

2、「原罪 はじめてのつみ」 宗教注意

3、「白衣の天使」 看護師さんが好きな人どうぞ

4、「風邪薬」 夢の風邪薬です

5、「選ばれた男」 ホラー?

続きを読む

このページのトップへ
コンテントヘッダー

目次101~

101、「神はサイコロを振る」 ある男が罪に問われ
    「神はサイコロを振る」(オチ付け足し)

102、「奇跡」 起きる時は起きるのかも

103、「奇跡は起こらなかった」 検死担当医が呼ばれて

104、「黒いサプライズ」 シモネタ注意

105、「白いサプライズ」シモネタ注意. 

続きを読む

このページのトップへ
コンテントヘッダー

遺言




「違ってたら不味い、と思ったから持ってきた。確かめて」
 布に包んだ箱を、ベッドのそばの椅子に置き、私は言った。
「納戸の一番奥に在ったのはこれだけなので、まあ、間違いないとは思うけど」

 父はそれに目をやり、次に私を見、
「わざわざ済まんな」と、言った。

”親の最期の頼みだから”という言葉は飲み込んで、包みを解き、箱を開けて、中から目当てのものを出す。人の頭ほどある白磁の壺だった。

 陶芸家であり、私の師でもある父は、癌を患い、入退院を繰り返し、ついに動けなくなってしまった。
 そして、昨日、見舞いに来た私に、頼みがある、と言ってきたのだ。
 
 それがこの壺のことだった。自分が死んだら、それに骨を入れて葬って欲しい、という。つまり骨壷だ。父は自分の骨壷を、予め作っていたらしい。
 私は、保管場所を聞き、言われたところにちゃんとしまわれていたこれを、父に見せに来たのだ。

 間違いがないようにという理由も、もちろんあったが、それよりもどうしても父に聞きたいことがあったからだ。

 私は壺を父に手渡した。だいぶ力も弱っているはずだが、父はしっかりとそれを掴み、しげしげと眺めながら、ゆっくりと撫で回した。

「そいつで間違いないんだね」
 私は聞いた。
「ああ、これで間違いない。こいつを私の骨壷にしてくれ」
 父ははっきりと答えた。

 病いで弱っているとはいえ、父は別に認知機能や目が衰えているわけではない。私は納得がいかなかった。

「なぜ、それなの?俺にはその壺は出来が良いようには見えないんだけど」
 私は言った。
「親父の最高傑作は当然、人の手に渡ってるし、骨壷にしてしまえば、世間の目に触れなくなってしまうから、出来の良いものを使わないのはわかるけど、それにしたって、それはあまりにも……」

 私の言葉を聞き、父は静かに微笑んだ。
「まあ、お前なら不思議に思うだろうな。わかるよ」
 そう言って、私に壺を返してよこした。
「確かに、これは出来が良くない。自分の作として人に見せるのは、恥ずかしいくらいだ」

 なんだ。父もそう思っていたのか。では、なぜ?

「でも仕様がないんだ。この壺は、タミが、お前の母さんが死んだ直後に作ったものでな。やはり平静ではいられなかったから」

 ああ、母さんが死んだときの……。

 母は、私が小さいときに事故でなくなった。突然のことで、父も私も悲嘆にくれた。立ち直るのにはお互い、ずいぶん時間がかかった。
 するとこの壺は、母が死んだあとの最初の作品ということなのか。だから、自分の骨壷にしようと。

「それに」
 続けて父が言った。
「骨を使ったのは後にも先にもこれだけだから、やっぱりうまくいかなかった。ボーンチャイナの技法を参考にしたんだが、母さんの肌の色のような白さを作り出すことはかなわなかった」

はっ?骨って、ひょっとして……。

「母さんの遺骨は全てこの壺の材料となっている。この壺は母さんの分身みたいなものなんだ」
 
 やっぱり。
 聞くところによると、納骨のあと、一人でそれを掘り出し、遺骨を回収。墓の下の母の骨壷には、何も入っていないらしい。

 私は納得し、壺を携え、病室を後にした。

 
 数カ月後、父は亡くなった。
 私は遺言どおり、父の遺骨をその骨壷に入れることはしなかった。

 父の骨は今、私の目の前で、細かく砕かれている。私はそれで壺つくるつもりだ。もちろん、自分の骨壷にするために。


終わり
 

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

このページのトップへ
コンテントヘッダー

夜更けの帰宅




 鍵を持ちあるいてはいないので、いつものように玄関のドアを叩いた。
 待つことしばし。鍵を外す音が聞こえ、扉が開き、母が「おかえり。遅かったのね。お疲れ様」と、自分を出迎えてくれる……、はずだった。

 しかし、今日に限っては、何も起こらない。
”なにかで手が離せないのかな?”
 もう一度ドアをノックする……。
 
 しかし、やはりいくら待っても鍵が外れる音がしない。
”おかしい?どうしたんだろう?”
 僕はリビングの窓を見た。ちゃんと明かりはついている。いつもなら、父と母はあの部屋で、本を読んだり、編み物をしているはずだが……。

 更にもう一度、今度はもっと強く扉を叩いた。しかし、やはり何事も起こらず、辺りは静寂に包まれ、コトリとも音がしなかった。
 しかし、よく耳を澄ますと、家の中から、微かに両親の声が聞こえてきた。

 外まで音が漏れるということは、二人はかなり大声を出しているらしい。とても珍しいことだけど、喧嘩でもしているのか?

 しばらく聞き耳を立てていると、父が何やら叫んだようだった。
 すると、突然、僕にある思いがこみ上げてきた。
 ああ、ここにいては駄目だ。戻らなきゃ。

 戻る?でもどこへ?

 霞がかかっていたような頭が、やにわにはっきりとした。
 そうだ!僕は仕事場で事故に合ったのだ!
 
 普段から気を付けていて、絶対にそんなことにはならない、と思っていたのに……。まるで何かに魅入られたようにふらふら機械に近づいて、巻き込まれ……。身体中に激痛が走り、そして気を失った。それから……。

 それからどうなった?
 その後、思い出すのは、家に向かって歩いている自分だ。その時は、ただただ、家に帰らなければ、と、取り憑かれたように思っていた。けれど……。

 今は戻りたい。
 家ではないどこかへ。
 それはどこだ?

 ふと、昨夜のことが思い出された。
 昨日の夜、知り合いの船乗りのおじさんが、不思議なことを言って、不思議な物をおいていったのだった。

 何でも願いを叶えてくれるという、猿の前足の干物。
 
 父は冗談半分で、家のローンの代金を望んだ。そんなものに頼んで、お金が手に入るなら苦労しないんだが。
 貧乏な僕たちが大金を手に入れるとしたら、それこそなにかの被害者にでもなって、賠償金と慰謝料を貰う時くらいだろう。

 ああ、理解った。
 そうだ、僕はそれで死んだのだ。きっと両親に家のローン代が入るのだろう。
 僕が今こうして家に戻ってきたのは、多分母の望みか。

 けれど今の僕の姿は、顔は潰れ、左手はなく、歩けるのが不思議なくらい両足もぐちゃぐちゃだ。この姿を父は母に見せたくなかったのだろう。だから僕は墓地に帰りたいのだ。
 
 よし、帰ろう。墓地に帰ろう。
 けれど何かがまた命令する。途中、人を見たら噛みつけと。誰でもいいから、手当たり次第に噛めと。
 ちょうどいい具合に、あちらから酔っぱらいがやって来る。やらねばなるまい。

 噛まれた人がその後どうなるか、僕にはわからないが、実行した瞬間、また、あの猿の前足が頭に浮かんでいた。そして、その前足の持ち主と思われる猿が笑った気がした。

終わり



テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

このページのトップへ
このページのトップへ
プロフィール

火消茶腕

Author:火消茶腕
ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
フリーエリア
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR