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このブログにはしろうとが趣味で書いた創作ショートショートが載せてあります。

 

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魔石

 魔石


 ついに勝てなくなったか。魔王はそう悟った。目の前に立ちはだかる勇者はほぼ無傷。体力も魔力もまだまだ余裕がありそうだった。それに比べ、こちらの臣下たちは既に全滅しており、自身も満身創痍。左腕はもう動かせない。魔力も枯渇寸前だった。


「私のの負けだ。好きにするがいい」

 魔王は剣を降ろし、床にあぐらをかいた。


「さすが魔王。潔い態度だ」

 勇者は構えを解いたがそれでも油断なく近付くと、剣先を魔王の首に当て、「なにか言い残すことはあるか?」と、相手に尋ねた。


 その言葉に魔王は一瞬怪訝な顔をして勇者を見つめ、それからかすかに笑うと、「言い残すことなど何も」と言いかけた。しかし、すぐに思い直し「言い残すことはないのだが、お前に一度尋ねてみたいと思っていたことがある。答えてくれるか?」と、聞いた。


 尋ねたいこと?勇者は意外な顔をしたが、すぐに頷いた。

「ああ、いいとも。何でも聞くがいい。俺が答えられることなら全て正直に答えよう」


 その言葉を聞き、魔王は勇者に言った。

「ずっと引っ掛かっていたんだが、なぜお前はいつも一人なんだ?」

 

 思っても見なかった問いなのか、勇者はすぐに答えなかった。そこで魔王は言葉を重ねた。

「最初はおのれを過信しているからなのかと思った。仲間などいらぬ、返って足手まといだと。そう考えての単独行動なのかとな。しかし、お前はここまで来るのに何度か死にかけているだろう。特に、この城内での戦いでは、叶わぬと悟ってか幾度も撤退しているではないか。なのに、なぜ仲間を連れてこなかった?なぜ、いつも一人でここに乗り込んできた?」


「ああ、なるほど。そのことか」

勇者は答えた。

「簡単な話だ。仲間をつくれば報酬の分配をしなければならなくなるからさ」


 勇者の言葉を聞き、魔王は目を丸くし、それから笑った。

「宝を独り占めしたいがために一人でここまで来たのか」


「ああ、そうだ」

勇者は魔王の言葉を肯定したあと、しばし沈黙し、それからぼそりと、「1024だ」と言った。


「1024?何だその数字は?」

 魔王は訝しげに尋ねた。

勇者は答えた。

「俺が今まで集めた魔石の種類の総数だ。残すはあと一つ」

 

そう言って、魔王を睨んだ。

「忘れもしない。6つの時だ。初めて魔石を見た。今思えばさほど珍しくもないコボルトのものだったよ。しかしその時、俺はこの世にこんなにきれいなものがあるのかと、ものすごい衝撃を受けた。それでどうしてもそれが欲しくて、何度も親父に頼み込んで、やっと買ってもらった。

 それから毎日飽きもせずその魔石を眺めていた。しかし、魔石というのは魔物が倒され、身体が消滅すると現れるもので、この世にはたくさんの魔物がおり、たくさんの魔石があることをやがて知った。

 それからはもう矢も盾もたまらなくなって、魔物を倒して魔石を手に入れることだけを考えた。

 腕を磨き、弱い魔物から始めて、徐々に強いやつらを倒しては魔石を集めてるうちに、周りが勝手に勇者呼ばわりしてきたのさ。俺としては魔石さえ集められればよかったので、魔物討伐の依頼は喜んで受けた。けれど、仲間をつくって、もしこの世に一つしかない魔石を目の前で横取りされたりしたらと思うと、とても誰かと一緒に魔物を討伐する気になれなかったんだ。だから一人だったてわけだ」

 


 勇者の言葉を聞き、魔王は笑って言った。

「まさか同じ趣味をしていたとはな」

「なに?」

 意外な言葉に勇者は声をあげると魔王が手を突き出した。

「これを見るがいい」

 差し出されたその手にはクルミ大の石が載っている。


それを見て勇者は目を見張った。

「まさか?その光り方は魔石?しかしそんな魔石見たことが……。黒い光と白い光が混じっていないか……。しかも歪みがある」

 魔王から石を受け取ると勇者は食い入るように見つめた。

「けれど、こんな風に脈打つ光り方は自然石ではありえない。やはり魔石だ」

勇者は顔を上げ、魔王に詰め寄った。

「一体、この魔石はなんという魔物のものなんだ?」


 魔王は不気味に笑い言った。

「人間だ」

「嘘だ!」

 勇者は怒鳴った。

「人間は死んで消滅したりしない。魔石を採取できるわけないだろう」


 勇者の剣膜に意を介さず魔王は言った。

「そこは不思議なところなんだが、人間の魔石は死体をまさぐって探すしかないんだ。しかもこれが最も厄介なんだが、どの人間も魔石を身体の中に持っているわけではなくてな。まあ、今まで百体に一個ぐらいの割合でしか見つかっていない。魔石を身体に持っている人間に何か特徴がないか、随分調べてもみたが、結局分からなかった。さらに見つかった魔石もどこか欠けていたり、歪んでいたりしていて、真に鑑賞に耐えるものは少なく、私が持っているものでそれが最もきれいなものなのだ」


 勇者は魔王が指さした手の中の魔石をもう一度見つめた。

「すると、お前たちが執拗に人間を狙ってたのは」

「ああ、魔石を採取するのが目的だったのさ。それを越える石がいつか見つかるのを期待してな」 魔王が答えた。

「嘘だ、お前は俺を担いでいるんだ。本当はこの魔石は俺がまだ知らない魔物のやつなんだろう」

 そう決めつけた勇者の言葉に力はなかった。


「まあ、信じようと信じまいとお前の勝手だし、お前が今持っている石で満足できるなら、なにも問題ないだろう。そいつはお前に譲るよ。まあ、そうしなくてもお前は取っていっただろうがな」

 魔王は高らかに笑った。

 その耳障りな声に勇者は酷く腹が立ち、即座に魔王の首をはねた。


 たちまち魔王の身体は消滅し、こぶし大の漆黒の魔石と変わった。勇者はそれを拾い上げ、しみじみと眺め回した。

 これで長年の目標は達成した。この世にある魔石の全種類を手に入れたのだ。とてつもない達成感でこの身が満たされ、言いようもない愉悦を感じるだろうと思われていた。しかし……。


 勇者はもう一方の手にあった人間の魔石と魔王が言ったものを再び見た。人を魅了する怪しい光。そしてわずかな歪み。


 勇者は身を翻し、新たな決意を胸に秘め、魔王城を後にした。


終わり



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目次1~100

1、「前書き そんな時代」 創作をする方々に

2、「原罪 はじめてのつみ」 宗教注意

3、「白衣の天使」 看護師さんが好きな人どうぞ

4、「風邪薬」 夢の風邪薬です

5、「選ばれた男」 ホラー?

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目次101~

101、「神はサイコロを振る」 ある男が罪に問われ
    「神はサイコロを振る」(オチ付け足し)

102、「奇跡」 起きる時は起きるのかも

103、「奇跡は起こらなかった」 検死担当医が呼ばれて

104、「黒いサプライズ」 シモネタ注意

105、「白いサプライズ」シモネタ注意. 

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シンデレラの罠

   


 イトウソウジは既に店に来ていた。私は軽くうなずき、対面の席に座る。彼は私の義妹の従兄妹に当たる。そして私の中高の同級生だった。
 彼らの祖母の葬儀が終わり、しばらくたった頃、私に話があるという連絡が彼から来た。そこで、この店を待ち合わせの場所に指定したのだった。
 飲み物を注文した後、当たり障りのない会話が続く。なかなか本題には入らない。まあ、彼からしたら言いにくいんだろう。それならばということで、私から切り出した。

「それにしても、あなたのおばあさん、いくら亡き娘の忘れ形見とはいえ、ミチコちゃんだけに全財産を譲るよう遺言書を残していたとは、驚いたわ」
 私の言葉に彼は苦笑いをした。
「僕もだよ。祖母はミチのことになるとちょっとおかしくなるな、とは思っていたけどね」
「まあ、魔法使いのおばあさんだったんだからしょうがないよ」
 私はそう返事した。私の言ったことに意味が判らないのか彼はキョトンとしている。
「魔法使いのおばさんってどういうこと?」

「あれ?知らなかった?」私は笑った。「私とトモミがあなた達のおばあさんに付けたあだ名。ミチコちゃんには受けてたんだけどな」
「知らないな。なんでそんなあだ名に?」
 本当に聞いてないのか?私は疑問に思いながらも答えた。
「なんでって、私達の母とミチコちゃんのお父さんが一緒になった後、私達が影でなんて言われるようになったか知ってるでしょう?」

 彼は頭を振った。
「いいや。知らない」
「そう?」
 私は彼を見た。とぼけてるようにも見えるが、まあ、いいか。
「中学生の時に私達三人が同じ家族になったわけだけど、それ以来あなたの従兄妹は女子の間で東中のシンデレラって言われてたのよ。で、私とトモミはシンデレラの姉ってわけでさ。だから、亡くなったあなた達の祖母は魔法使いのおばあさん。シンデレラが困っていると現れて、色々助けてくれる人」

 それを聞き、彼は不快な顔をした。
「確かにミチのお父さんが再婚したことで、ミチにはシンデレラみたいに継母と義理の姉二人ができたさ。けれど、それで君たちをシンデレラの姉呼ばわりはひどいと思うな。どう考えても悪口じゃないか」
 
 私は笑顔を崩さずに言った。
「でも仕方ないと思うよ。だって、ミチコちゃん、すごい美少女じゃない。私、初めて会った時びっくりしたもの。世の中にはこんな可愛い子もいるんだって」
 彼らの曽祖父はロシア人だったとかで、顔の作りからして違っていた。親類みんな美形揃いで彼らが並ぶと壮観で圧倒される。
「それに対して義理の姉である私達はというと、どう贔屓目に見ても並以下。しかも母娘揃って意地悪そうな目つきをしていて、こりゃ、義理の妹はいじめられてるな、って誰でも思っちゃうよ」

「そんなことはないよ!」
 彼は幾分声を荒らげた。
「君たち姉妹が意地悪そうだなんてことは絶対ない。それに、君たちはミチのことをこれっぽっちもいじめたりしてないじゃないか。むしろ、気の使いすぎじゃないかな、と僕は思っているんだが」
 
 ほう?そんなふうに考えていたとは意外だ。多分、礼儀上、言ったのだろうけど。
「でも、家事全般をミチコちゃんに押し付けてるんだから、いじめかなあとも思うんだけど」と、私は言った。
「しかしそれだって、ミチの希望に沿っただけだろう」
 彼は反論した。
「ミチは小さい時からお母さんから色々教えられていたから料理や掃除はすごく得意だし、現に今だって喜んで家を切り盛りしてるじゃないか」

 そうなのだ。ミチコちゃんの亡くなったお母さんはとても家庭的な人で、ミチコちゃんもそんなお母さんが大好きで。
「それに、これはミチから聞いているか知らないけど、叔母さんが大事にしていた調理道具や食器なんかを当初は誰にも触らせたくなかったらしい。そんな気持ちを汲んでくれて、家事全般を任せてくれた君のお母さんには、ミチは感謝してたよ」

「まあ、ミチコちゃんからそれを聞いて、私達は台所では好き勝手したことはないけれど……。そんな事情みんな知らないわけだし。それに、家族旅行とかではミチコちゃんを置いてきぼりにしてる」

「それも違うだろう」
 彼は言った。
「ミチは子供の頃嫌な目にあってからは極力外に出たがらないじゃあないか。それに家族旅行と言っても、マサノリさんも仕事が忙しくて同行していないことが多いんだし、わざとミチを仲間外れにしてたわけじゃないじゃないか」
 そうなのだ。美少女の宿命なのか、ミチコちゃんは悪い男に拐われそうになったことがあるらしい。それで、今もよっぽどのことがない限り、人混みには出ない。若い男は近づくだけで恐怖を覚えるそうだ。この従兄弟は唯一の例外だ。
 
 それにしても、彼はよく我が家の状況を知っている。ミチコちゃんは彼にはなんでもしゃべっているのかな。
「ええ、確かにそうかも知れないけれど、世間には通用しないよ。あなたのおばあさんだってミチコちゃんは可哀想なシンデレラだから、助けてやらなくては、と思ってたんでしょう。ガラスの靴はなかったけれど、生前もやれ誕生日だ、クリスマスだって時は、色々送られてきてたよ」
 そして、ついでに私達の悪口も周囲に言っていたらしい。母は継子には何も買ってやらないようなので、私が送っているのだ、とか。
「ミチコちゃんは自分の境遇に一応満足していたから、可哀想な子扱いされるのは正直閉口していたみたい」
 そして、おばあさんが私達の悪口を言っていることも知っていて、心痛めていたようだ。
「だから、これ以上あなたのおばあさんから何も受け取る気はないんだよ、きっと」
 
「多分そうなんだろうな」
 彼はうなずいた。
「そういう訳だから、相続拒否の意思は固いと思う。私が説得したくらいではウンと言はないと思うよ」
 残念ながらあなたの希望通りにはいかないだろう。私は彼がどんな顔をするのか注視した。

「まあ、だめだろうね」
 彼はあっさりと言った。
「僕としてはミチの気持ちを尊重するつもりだよ。父と母がどう考えてるか知らないけど」

 あれ?どういうこと?私にミチコちゃんの説得をして欲しくて呼び出したんじゃないの?
 私は少し混乱して黙っていると、彼は突然言った。

「彼氏と別れたんだって?」
 は?なに?なんで知ってる?彼氏とは高校からの付き合いだから、私の彼氏の存在を目の前の男が知っていてもおかしくはないが、別れたのはつい最近のことだ。
 ミチコちゃんか?ミチコちゃん、この男に何でもしゃべりすぎじゃないだろうか。私達の個人情報は勘弁してほしいところだ。
 
 私はややうろたえながら、答えた。
「そうだよー、足の指切ったりしてないからまだましだけど、シンデレラの姉では王子様と結ばれるのは厳しいらしいや」
 彼はなんとも言えない、やや緊張したような顔をして言った。

「じゃあ、また、食事に誘ってもいいかな?」
 はあ?
 えっ?
 なに?えっと、そういうこと?
 えーっ!

 中学時代、彼は名前をもじってイトウ王子と女子の間で呼ばれていた。彼の容貌は少女達にとって王子様に相応しいものだったのだ。

 シンデレラの姉と王子様。無理、不釣り合い、という思いと、姉がシンデレラを差し置いて王子と結ばれるというある種のカタルシスを感じて、私は戸惑った。
 いけない。私はシンデレラの姉などではなく、彼も王子様なんかじゃあない。でも……。

「ええ、いいわ。食事くらいなら」
 私はそう返事した。
 含みをもたせ、とりあえず問題は先送りしよう。そして慎重に見極めよう。シンデレラの罠に嵌まらないように。

終わり

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

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Author:火消茶腕
ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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