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 いらっしゃいませ。
このブログにはしろうとが趣味で書いた創作ショートショートが載せてあります。

 

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目次1~100

1、「前書き そんな時代」 創作をする方々に

2、「原罪 はじめてのつみ」 宗教注意

3、「白衣の天使」 看護師さんが好きな人どうぞ

4、「風邪薬」 夢の風邪薬です

5、「選ばれた男」 ホラー?

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目次101~

101、「神はサイコロを振る」 ある男が罪に問われ
    「神はサイコロを振る」(オチ付け足し)

102、「奇跡」 起きる時は起きるのかも

103、「奇跡は起こらなかった」 検死担当医が呼ばれて

104、「黒いサプライズ」 シモネタ注意

105、「白いサプライズ」シモネタ注意. 

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夜更けの帰宅




 鍵を持ちあるいてはいないので、いつものように玄関のドアを叩いた。
 待つことしばし。鍵を外す音が聞こえ、扉が開き、母が「おかえり。遅かったのね。お疲れ様」と、自分を出迎えてくれる……、はずだった。

 しかし、今日に限っては、何も起こらない。
”なにかで手が離せないのかな?”
 もう一度ドアをノックする……。
 
 しかし、やはりいくら待っても鍵が外れる音がしない。
”おかしい?どうしたんだろう?”
 僕はリビングの窓を見た。ちゃんと明かりはついている。いつもなら、父と母はあの部屋で、本を読んだり、編み物をしているはずだが……。

 更にもう一度、今度はもっと強く扉を叩いた。しかし、やはり何事も起こらず、辺りは静寂に包まれ、コトリとも音がしなかった。
 しかし、よく耳を澄ますと、家の中から、微かに両親の声が聞こえてきた。

 外まで音が漏れるということは、二人はかなり大声を出しているらしい。とても珍しいことだけど、喧嘩でもしているのか?

 しばらく聞き耳を立てていると、父が何やら叫んだようだった。
 すると、突然、僕にある思いがこみ上げてきた。
 ああ、ここにいては駄目だ。戻らなきゃ。

 戻る?でもどこへ?

 霞がかかっていたような頭が、やにわにはっきりとした。
 そうだ!僕は仕事場で事故に合ったのだ!
 
 普段から気を付けていて、絶対にそんなことにはならない、と思っていたのに……。まるで何かに魅入られたようにふらふら機械に近づいて、巻き込まれ……。身体中に激痛が走り、そして気を失った。それから……。

 それからどうなった?
 その後、思い出すのは、家に向かって歩いている自分だ。その時は、ただただ、家に帰らなければ、と、取り憑かれたように思っていた。けれど……。

 今は戻りたい。
 家ではないどこかへ。
 それはどこだ?

 ふと、昨夜のことが思い出された。
 昨日の夜、知り合いの船乗りのおじさんが、不思議なことを言って、不思議な物をおいていったのだった。

 何でも願いを叶えてくれるという、猿の前足の干物。
 
 父は冗談半分で、家のローンの代金を望んだ。そんなものに頼んで、お金が手に入るなら苦労しないんだが。
 貧乏な僕たちが大金を手に入れるとしたら、それこそなにかの被害者にでもなって、賠償金と慰謝料を貰う時くらいだろう。

 ああ、理解った。
 そうだ、僕はそれで死んだのだ。きっと両親に家のローン代が入るのだろう。
 僕が今こうして家に戻ってきたのは、多分母の望みか。

 けれど今の僕の姿は、顔は潰れ、左手はなく、歩けるのが不思議なくらい両足もぐちゃぐちゃだ。この姿を父は母に見せたくなかったのだろう。だから僕は墓地に帰りたいのだ。
 
 よし、帰ろう。墓地に帰ろう。
 けれど何かがまた命令する。途中、人を見たら噛みつけと。誰でもいいから、手当たり次第に噛めと。
 ちょうどいい具合に、あちらから酔っぱらいがやって来る。やらねばなるまい。

 噛まれた人がその後どうなるか、僕にはわからないが、実行した瞬間、また、あの猿の前足が頭に浮かんでいた。そして、その前足の持ち主と思われる猿が笑った気がした。

終わり



テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

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遅すぎ?




 だいぶ前から、妻とは上手くいっていないと感じていた。特に言い合いをするわけではなく、表面上は平和に過ごしていたが、昔のように親しくすることはなくなっていた。私としては、そのことについて少し気にはなっていたが、こちらから何らリアクションを起こすことはなく、そんな状態が十数年続いていた。

 それでも子どもたちが家にいた間は、それに耐えられていた。しかし、最後まで残っていた末の娘が嫁いで行き、妻と二人きりになってからは、家の中は静まり返り、常になにか重苦しい空気が部屋に満ちている気がした。

 考えてみれば、ここ30年、仕事にかまけ、家事も育児も妻に任せっきりで、ろくに家庭を顧みなかった。妻が私に冷たいのも当然だと思う。
 私は深く反省し、あることをしようと決めた。今までやったことがなかった、結婚記念日のお祝いを妻に贈ろうと考えたのだ。
 姑息だとわかっているが。

 そして今日が丁度結婚30周年目だ。私は花とケーキを携え、帰路に向かった。もちろん他のプレゼントも用意した。店員に勧められたネックレスと旅行券。休暇をとって、国内の温泉旅行に誘うつもりだった。

 定刻よりやや遅れて帰宅すると、妻は普段と同じようにキッチンにいた。
「ただいま。これ買ってきた」
 私は妻に近付くと花とケーキを渡した。

「それからこれも」
 カバンからリボンがかけられたプレゼントの箱を出す。
「受け取ってくれ」

「えっ?」
 妻は驚いて私と箱や花を見つめた。何事か測りかねているようだった。
 私はできるだけ平静に言った。
「結婚記念日のお祝い。今日は二人が結婚して丁度30年だろう。だから」

 私のセリフを聞いた妻は、しばらく黙ってプレゼントを見つめていたが、それから小さくフフッと笑った。
 そして笑い声はだんだん大きくなり、ついには狂ったような高笑いとなった。

 私はぎょっとした。これはまずい。少しは喜んでくれると期待してはいたが、これは地雷を踏んだか?
 そう思っていると、妻の笑い声は泣き声にと変わった。

「ど、どうした?何かまずかったか?」
 私が妻のそばに寄って聞くと、妻は涙声で言った。
「遅い、遅いよ、ばか」

 私は返す言葉がなかった。
 そうか、やっぱりか。長い間、夫らしいことをしてこなかった。いまさら結婚記念日だからと、プレゼントや花など買ってきても、妻には怒りを誘うものでしかないのだろう。

「すまん」
 私は妻に頭を下げ、プレゼントをテーブルに置いて、キッチンを出て行こうとした。
 すると、まだ涙声で妻が私に言った。
「三日前、16日、夕ご飯何だったか覚えている?」

「えっ?」
 あまりに意外な問いに私はかなり驚いた。けれど、今妻を刺激するのはまずい。そう思い、素直に記憶をたどった。
 確か、その晩は好物のサバの味噌煮だったはずだが……。

「サバの味噌煮?」
 私は恐る恐る答えた。
「そう、覚えててくれたのね」
 妻はニコリともせず言った。
「実は去年の4月16日も夕飯のおかずはサバの味噌煮だったのよ。さすがに覚えていないでしょうけど」

 私は妻が何を言いたいのかわからず黙っていた。
「あなたと結婚してから4月16日の夕飯はサバの味噌煮と決めていたの。あなたが好きだったから」

「えっ、そうだったの?えっ?すると、ひょっとして?」
 恐ろしい考えに思い当たった。
「今日、4月19日は私達の結婚記念日じゃないわ。入籍を3月19日にして、4月16日に結婚式と披露宴をあげたのよ。あなたはだいぶ前からごっちゃになっていたようだけど」

 何ということだ。自分たちの結婚記念日を間違っていたとは。
 これではたしかに遅すぎる。30年目の結婚記念日はすでに3日前に終わっていたのだ。

「本当にすまん」
 私は深々と頭を下げた。
「何とわびていいのかわからない。こんな亭主では愛想も尽きただろう。もし、お前がもう離婚したいと望むなら、好きにしてくれて構わない。俺はできるだけの償いをするつもりだ」

 そこに妻の声がした。

「来年の4月16日に、今度は間違えずに32回目の結婚記念日のお祝いをしてくれるなら許します」

 許してくれるという言葉に喜んで頭を上げたが、ちょっと引っかかった。
「32回目?来年なら31回目になるはずでは?」

 言って、すぐに悟った。
 妻は呆れ顔で見ている。

「今年で結婚31年目です。結婚30周年は去年の4月16日、もしくは3月19日でした」

 いやはや、なんとも。とんでもない亭主だと自分でも思った。それでも妻は来年の結婚記念日も一緒にいてくれるつもりらしい。
 私は再び妻に深く頭を下げた。


終わり

テーマ : ショートショート
ジャンル : 小説・文学

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Author:火消茶腕
ジャック・リッチーの短篇集を読んで、その読みやすさに感銘を受けた火消茶腕です。

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